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【尾白川・中流部】 5月 山梨県・北部

対象魚 イワナ・アマゴ
釣果程度 ☆☆☆
混雑程度
サイズ ☆☆☆
放流実績 ヤマメ・5、000尾(稚魚のみ)(平成11年5月30日実施)
イワナ・3,000尾(稚魚のみ)(平成11年5月8、9日実施)
総合評価 ☆☆☆
解禁期間 3月1日〜9月末日
入漁料 日釣券(前売り)・¥800-/日釣券(現場売り)・¥1,200-/年券・¥4,000-
備考 言わずと知れた山梨県の銘渓。
参考 天候及びフィールド状況 → 午前7時入渓時点で雨・無風
                  気温15℃、水温9℃
                  ハッチ無し

使用タックル →        ロッド・#3 SAGE SP389
                  ライン・#3(SAGE専用ライン)
                  リーダー・クライマックス5X
                  ティペット・アムコア5X
                  使用フライ・#12オリーブアダムスパラ

石灰岩質の谷を流れ落ちるその水は、アルカリに富んだ硬質で、且つ何処までも透き通る流れは、日本の銘水に数えられるだけ有って、思わずため息を飲むほどに美しい。
前述した石灰岩質の地形が持つ特色として、非常に濁りに強い渓だと言える。少しばかりの雨では濁りの影響は全く受けないと言って良い程に美流を保つ。
ただし、これらは客観的に見た美しさであって、我々フライフィッシャーにとっては、その透明度の高さ故に、かえって魚に警戒を与える結果となり、他の渓に比べれば難しい釣りを強いられる事も事実だ。
今回ご紹介するのは、駒ヶ岳神社から上流に聳える不動滝までの約3〜4Km区間。
駒ヶ岳神社から以遠は、直ぐに連瀑帯に入り落差の激しい滝に行く手を阻まれる。ついては、軽装備で遡行するのはまず無理なので、脇に寄りそう登山道を利用し、渓に降り立てる場所を ポイント的に拾い釣りする程度の釣行となる。
確かに尾白川渓谷と呼ばれる景勝地の瀑流帯を登山道から見下ろせば、フォッサマグナが作り出した自然の芸術に時を忘れて見入るに違いない。
ただし、それは登山客の視点で語られる景勝。つまりは、釣り人からすれば”景勝”等とはトンでも無い話で有って、その遡行の難しさは南ア前衛山系では群を抜く。

駒ヶ岳神社脇から上流を望む

R20沿いの白州町役場先の交差点を左折し、白州中学校脇を直進すると約15分程で町営の無料駐車場に到着する。ここは週末、100台近い駐車スペースが無くなるまでに車で賑わう。
当然釣り人も含まれるが、大半は白州観光キャンプ場の利用客か、甲斐駒ヶ岳を目指すハイカーのものだ。
伝説の大物が潜む千ヶ淵を望む
話はこうだ...
一昨年夏のある週明け、職場の上司が血相を変えて私の部屋にやって来た。「はらださん、昨日尾白の千ヶ淵行ったんだけどぉ、あそこはすんごかったゾォ〜〜〜、7mの餌竿真っ二つに折られちゃってヨォ、 竿先深場に持ってかれちゃってヨォ、それが淵の真ん中でグルグル引きずり回されてんのヨゥ、いや〜いや参ったのなんのって」

...オレは今でも絶対ウソだと思ってる。
千ヶ淵上の渓相
そう距離は無いがV字帯の突破は無理なので、左に付けられた登山道を利用して滝を巻く。
途中の階段は上方からの落石によって倒壊し、朽ちたハシゴは下方が覗いている状態なので足場を確保するのに苦労する。こんな荒れた登山道を、沢山のハイカーは良くもまぁ利用しているもんだ。
ここまでに於いては、まだ釣果無し。逃げまどう魚影を沢山確認しているので、定期的に放流はなされている様だ。
旭滝手前の渓相
旭滝に近づく頃に渓相は一変し、瀑流帯と化す。いよいよ尾白川渓谷の核心部分
へ突入だ。
名も無き滝が連続して行く手を阻むので、仕方なく左手の登山道を利用するが、道筋は細く斜度も急で一歩踏み外せばアウトだ。
釣り!? してる余裕無し...
サイド写真は旭滝上に聳える百合ヶ淵を見下ろす
神蛇滝手前の渓相

一箇所急斜面では有るものの、降りるに不可能な斜度では無かったので50〜60mの距離を滑り降りる。「あぁゴアテックスのウェダーが傷つくぅ〜〜」
やっとの思いで下に降り立つと、まわりの視界を遮る巨岩に驚かされる。まるで双六谷や黒桂河内川に来ている様な錯覚に陥った。
釣果無し...
何故逆向きに警告が...

四つん這いで下った斜面を登りきる。帰りを考えずに安易に降りてはいけない...
廃道にも取れる登山道を進むと、グングン高度を上げ出す。10分程をかけて一気に駆け上がると、そこには進行方向に対して促す”立入禁止”の看板が...
「不親切だなぁ、こっち向けとけよ」と思ったが、直ぐに自分が危険区間を利用して来た事に気づく。
#道何処で間違えた?さっぱわからん...
これぞ正しく絶景(神蛇滝)

ブツブツ独り言を言いながら立入禁止のトラロープをくぐると、ベンチと説明看板が目に留まった。神蛇滝だ。
その展望は素晴らしく、しばし見入ってしまったが、源流マンの性なのだろう。双眼鏡を取り出すと、何処かに巻けるところは無いかと必死で探す自分がそこに居た。
アホと思って頂いてけっこう。
不動滝下流の渓相
神蛇滝に分かれを告げ、ここからは綺麗に整備された安全な尾根道を進む。
時間にして大凡30分で不動滝に到着だ。不動大橋と呼ばれる吊り橋が見えたら、橋を渡らずに左脇から流れ込む支流に降りる。これを伝い一旦河原に降りたら、 渓を10分程下り、3m程の小滝上から釣り上がる事にした。

サイド写真は不動大橋を望む
不動滝を望む
やっと集中して釣りが出来る時間が訪れた。が、距離が短いので、不動滝下まで釣り上がって釣果が得られなければ潔く諦めるしか無い。
本ページで紹介した区間は、こんな釣りしか出来ないのだ。
お陰様で、下った地点から滝下までの300m程の短い間に於いて、7尾の源流イワナに出会う事が出来た。そう言った意味では魚影は濃いのだが、釣り場が限られる為にめぼしい下降地点を探しては降り、 降りては登るを繰り返さなくてはならず、体力の消費が激しい。
常に滑落や転落の危険がつきまとう事を考えれば、万全な装備で挑むべし。また、ペース配分を慎重に考えて行動する必要も有り。