[ホーム/"ヤマトイワナ"探釣記]



2001年5月12日 : 早川水系 A川 A−1支流



あの渓筋の水源付近には絶対に純血種が潜んでいるに違いない...
先週1週間は、こんな事しか考えられなかった。一刻も早くこの手で”早川水系純血ヤマト”の記録を残したい。
はやる気持ちを抑え続けて来たなが〜いなが〜い1週間が終わり、ようやく訪れた週末。前回は1泊で挑んだ探索を、今回は日帰りで詰める事にする。
目指す沢筋は、高度1800m。

”DNA”を調べる

例の如く、ヨダレを垂らしながら歩くあるくアルク...
進むに連れて段々と木々の緑は薄くなり、午前11時沢出会いに到着。目的地の周りは、ようやく芽吹きだした装いで、まるで3月中旬を思わせる程。まだまだ初夏には遙か遠い。
気温7度、水温7度。

身支度を整えている最中、ヤマト釣果への期待と不安から、興奮は最高潮を迎える。
なんとしてでも今シーズン初の私が求めるヤマトとの出会いを果たしたい。そんな願いを込めて、両沢がぶつかる溜まり場にアダムス#12を打ち込むと、なんと1発目で27cm
のイワナが釣れた。そいつは、紛れもなくF1もしくはF2・F3の混種で有ったが、さい先の良いスタートをきれた事への満足感と、これからじきに巡り会えるハズの 純血ヤマトを思えば、特別残念な気持ちにはならなかった。要は、釣り始めたばかりなので余裕が有るのだ。
私が努める会社の研究施設には、DNAを測定する機器が揃っているので、以降はこれを拝借させて頂く事にする。
下流から上流、ひいては広範囲で釣れた魚種のDNAを調べる事によって、ルーツを探る手助けになると考えたのだ。その為にも、是が非でも純血を釣らなければ...
鑑定に要する手間が省けて良いので、出来るなら血液を採取したいところだが、魚の体に注射針をブッ刺して血を抜くってのも忍びないので、尾ビレの一部をカットさせて貰う事に。
「パチンッ」
はい、一丁あがり!

何故出てこない純血!

ヤブ漕ぎを強いられながらも進む事30分程で、渓相は急にグングンと高度を上げ出した。果たして、こんなとこに棲息してるんだろうか?
不安がよぎるが、まぁ見た感じ魚が登れなさそうな落差では無かったので、気を取り直し更に先に進む。
1〜2m程の落差を越えると小さなプールが1つないしは2つ、また同じほどの落差を越えると小さなプールが1つないしは2つ、といった具合の言わば”小連瀑帯”とでも表現しようか。
絶対にヤマトの種沢だと確信していた私は、大きく予想を裏切られた様で、次の落差を登る足取りが重くて仕方が無かった。
胸上に溜まるポイントにそーっと近づきフライを落とすと、ボコッと反応が有った。この小渓に入ってから、今まで全く釣果が無いどころか反応・魚影すら確認出来なかった事を思えば、
天にも昇る快感で有った。
「キャー、ヤマトに違いないわよぉ〜っ」
一旦、呼吸を整える為にフライを手元へ。新しく良く浮くアダムスパラに交換し、同時にリーダーも5xから3xに変更した。(^^; だって出方が大物風だったんだもん。
ゆっくり丁寧にフライを投入...着水と同時に出やがった。3xではアワセ切れの心配は皆無だったので思いっきりアワセた。やったぜ、ガッチリとフッキングしてやがる。 セージのパックロッドを折れんばかりにしならせて引き抜けば、水中からは何やら真っ黒い魚体のイワナが飛んできた。
「ヤマトか?!?!」
高鳴る鼓動を抑えてネットを覗くと、うっすらと白斑が見て取れる28cmの交雑イワナで有った。
「...........な・ん・ぢゃ・こりゃ...こんなところにまでハイブリッドが?...」
これはどう解釈すれば良いのだろうか。

K土地理院のうそつき!

まだ先は有る。諦めてはならない。
それからまもなく、フライに飛び出してきたもう1尾を釣り損なって、その上の小さなプールで2尾目をキャッチ。残念ながら、コイツもハイブリッドだった。
そして、この2尾目を釣ったところから見上げた渓相は、何故かふた又に分かれ、両沢筋の先には確かに高い滝が聳えていた。
おかしい、1/25000の地図を読む限りは、分岐流など記載されていないハズなのに...等高線を読む限りではなだらかな傾斜が続くだけなのに...
そして水源を見定めて、”ADAMS登渓成功”のハタを立ててくるつもりだったのに...
この時点で、私のやる気と釣る気は完全に失せてしまった。ここへ辿り着くまでにも、この滝を登れば絶対にヤマトパラダイスが有るに違いないと自分に言い聞かせながら持続させていた"気力"は、もうここまでと相成った。

純血種確認出来ず...

確かな事前情報も無い状態では、過度の期待をしてはならない様だ。
それにしても、綺麗にヤマトイワナの血を受け継いでいる彼らの形質は、どこから貰ったものなのだろうか?メンデルの法則によれば、交配第一世代のF1は、両方の秀でた特徴を受け継ぐハズで、 以降、雑多な継承を取るのだから、見た目でF1と思い込んでいた私の認識が間違っていたので有ろうか。
どちらかに純血の親が居なければ、絶対にあのような体色にはならないと、今でも信じているのだけれど...