[ホーム/"ヤマトイワナ"探釣記]



2002年7月24日・25日 : 早川水系 E川



大がかりな次期システムに取りかかる前に、この辺で纏めて休みを取っておかねば。急遽休暇を申請し、なんと24日出発当日の明朝に突貫準備。120Lザックに荷物を詰め込みながら、 日頃使い慣れた”ピカチューのまくら”を持っていくべきか否か真剣に考えてしまった。
思えば、数日釣行なんていつ以来だろう...
台風9号?知るかんなもん。オレ様は行くと言ったら行くのだ。目指すは未だ残雪の残るE川最源流部。

「こんなに楽しくてゴメンなさい」

今回、コロを同行させるか最後まで思い悩んだ。体も大きくなって、みなぎるパワーを発散出来ずに困っている彼にとって、今回の釣行は良い機会かも知れない。がしかし、足手まといになるのは必至であった。 重さ20Kgを越す小屋を引きずるパワーは有っても、水3L分のペットボトル2本を運ぶパワーが無いのだ。2〜3分は頑張るのだが、そのうちワタシの顔を見上げて”水をくれ”とせがみ出す。
で、大岩のクリアー・渡渉・ヘツリ等々、ただでさえ25kgの荷物を背負ってるっちゅーのに、せがまれる度に彼を抱き抱えていては「ザック+コロ=45Kg」...!?
やっぱ1人で行こ。

途中までたどれた登山道もいつしか消え失せ、沢伝いに距離を詰める事となる。火照った体へ吹き付ける風の冷たさが心地よい。かなり標高を稼いでいる様だ。
当方の場合、ここぞと決めた目的地まではロッドを出さないのが通例なのだが、なにせ久方ぶりの休暇と釣りなのだ。我慢しろという方が無理である。「限られた時間は有効に使おうではないか」等と勝手な言い訳を見つくろい、早速タックルを準備。もうここから釣り上がっちまおう。
久しぶりに振るセージのアクションが懐かしい。同時に何カ月ぶりかで味わう清流の趣もたまらない。もちろん周囲の沢の水は全て飲料可。そして、ここ南ア源流地帯の水は7月下旬と言えども半端な冷たさではない。我慢出来ない程にチンチンと伝わる足の痛みがそれを物語っている。しかし今、この身体が小刻みに震えているのは、決して水の冷たさのせいではない。
豊かな水と抜群の水質に磨かれたイワナ達をはじめ、広大な森林が育んだ動植物。自称ヤマトイワナハンターの野遊び人としては、至福の休日にこの聖地で過ごせる喜び、仕事を忘れてドップリと "ウォーター・サンクチュアリ"に浸れば、これから何かが起きるであろう予感からくる”武者震い”なのである。

やはりヤマト探索はこうでなくては。(^^)

出がシブいなぁ...

モロモロ片付けなければならない溜まりに溜まった家の仕事(<ウッドデッキの塗装・草取り・タイヤのローテーション・オイル交換・部屋の掃除・子供のお守り・etc.etc.etc.etc.etc.....) そっちのけで、はるばる歩いて歩いて歩きまくってやって来たのである。是が非でもヤマトの顔を拝んで帰らねば。不完全燃焼だけは避けたい。
それにしても"ヤマトイワナウィルス"に感染すると厄介である。自覚症状が希薄な点もこれまた厄介極まりない。唯一の駆除方法はヤマトが絶滅...うう、いかんいかん。

釣り初めてから感じるのは、そこらじゅうに魚は居るのだけれど、大半は尻尾れでフライを叩くだけで、どうしてもフッキングに至らない事。時折大型が釣れるもスレが多く目立つ。 たぶん水の冷たさが原因なのでしょうなぁ。ちなみに水温は9度。をを?9度ってか?もう8月に入るってのに、なに考えてんねん。
使っているフライが大きすぎるって事も解っていた。でも...取り替えるのめんどくさいんだもん。いーのだ。これに見向きもしない連中には相手してやんないだけの話だし。 (<って、おまえの方が相手にされてないんぢゃ)

待望の純血GET!

たまに背中に浮き出る白斑模様が極めて薄い(凝視して微かに確認出来る程度)魚種が釣れる様になった。(写真上)
この段階で間違いなく原種が生息しているで有ろう事を悟る(<全くあてにならないけれど)。どれくらいの距離を詰めたのだろうか。下では余裕で振っていた8フィート9インチのロッドが、長すぎると感じる 位に川幅が狭まった頃、先に連瀑が姿を現す。この8年間、数限りなく出くわしてきたこの状況。時間切れで引き返すか、もしくは巻けずに引き返すパターン。わははっ、でも今日は泊まりだしぃ、時間は沢山有るしぃ、心に絶対的な余裕が有る時は鬼に金棒なのだ。もう気持ちは目の前
でグングン高度を上げ続ける連瀑の上に有った。登る前に、谷間の暗い滝壺へフライを投入。左流心、変化無し。右流心、変化...んん?なんだか竿先がモッチリと重いぞ? 魚信は感じられないけど引っ張れば引ける...根掛かりではなさそう。沈み枝だと思った。力を入れて胸元にロッドを寄せ付ける。陰の中から原因不明の固まりを寄せ、陽の光が届いた瞬間、むあっかかな魚体が目に飛び込んだ。
「ドッひゃぁぁぁぁ〜、ヤ、ヤ、ヤ、ヤ、ヤ、ヤマ、ヤマ、$#&%+▲’”◎っっっっっっ!!!」
後はもうご想像の通りである。

マット忘れるわカメラは落下させるわ...

連瀑の上流に魚は居なかった。それも全く。目的を達成させた充実感から、上流でのスカに関しては差ほどヘコむ事は無かった。ただし、原種1尾のみの釣果に至っては一抹の不安が残る。もしかして純血はあいつ1尾だけだったとしたら...イヤな想像を払拭しようとしても、拭い切れるものでは無かった。
ビバークポイントに戻って来てからも、そんな思いが頭を渦巻いていた。夕方、まだテントに潜るには早すぎる時間。辺りの針葉樹林を眺めながらゴロンと横になった。即座にカメラのストラップを足で引っかけ、足下でガシャンと音がした。
あれれ、上に乗せておいたハズのカメラが無いぞ。あれれ、オリンパスって書かれてるオイラと同じカメラが下に落ちているぞ。するってーと、さっき足で何かを引っ張ったのは自分の愛機?ガシャンと音がしたのはこいつが落ちた音?
「うわー、壊れた鴨!」
すかさず拾い上げると、レンズフィルターに土がめり込んでる!
「うわー、壊れた鴨!」
慌てて動作チェック。スイッチを入れるとディスプレイに"カードカバーが開いてます"なるエラーメッセージが!開いてねーっつーの!
「うわー、壊れた鴨!」
コンピュータで培ったクセで、取りあえず困った時はリブート。
ををー、なんか正常に動いてるぞ?ラッキー。(^^)v さっすがコンパクトクラスのカメラは、写りも強固な作りもオリンパスに限りますなぁ。

午後8時前。満点の星空を見ようと頑張って居たのだけれど、あまりの寒さと眠気でテントへゴー。
「あー、マット忘れて来た...凹凸凄まじいぞぉ、背中痛いかも...」仕方なく、凸を避けた状態で体制を整えると”ら”の字になってしまった。
午前1時、フライシートを叩き付ける雨音で目を覚ます。午前3時、表で何者かが枝に吊して置いたワレの大事なシャウエッセンを漁っている音で再び目を覚ます。

「うぅ〜、"ウォーター・サンクチュアリ"なんて表現したけれど、旅館に泊まりたいかも...」