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【黒河内川・中流部】 5月 山梨県・西部

対象魚 不明
釣果程度 不明
混雑程度
サイズ 不明
放流実績 無し
総合評価 期待を込めて ☆☆☆☆
解禁期間 3月16日〜9月30日
入漁料 日釣券(前売り)・¥1,000-/日釣券(現場売り)・¥2,000-/年券・¥4,000-
備考 黒河内川と書いて”くろごうちがわ”と読む。
奈良田ダム直下に流れ込む早川の支流。
参考 天候及びフィールド状況 → 午前9時入渓時点で雨・無風
                  気温15℃、水温5℃
                  ハッチ無し

使用タックル →        ロッド・#3 SAGE SP389
                  ライン・#3(SAGE専用ライン)
                  リーダー・クライマックス5X
                  ティペット・アムコア5X
                  使用フライ・#12のヘアズイアー
                         #12のオリーブアダムス

奈良田湖は昭和30年、電力発電を目的に建設されが、1959年(昭和34年)の伊勢湾台風によって、大量の土砂が流入し、ダムは一瞬にして埋め尽くされてしまった。
湖底は持ち上げられ、奈良田周辺の村落50戸は、当時水没の危機にさらされたらしい。

それにしても、奈良田湖周辺の渓は、どれを取っても見るに無惨な姿だ。ほぼ全ての流れは水力発電用に中流部にて取水される為、下流に水は無い。
今回ご紹介する渓”黒河内川”も例外では無く、取水施設より下流にわずかながら流れる水は、まわりの清水や小さな流れ込みが集まったものだ。夏になると、わずかながら蓄えられた水もすぐに干上がり、 もはや魚は生息していない。
釣果の期待が持てる地区は、下流に3基聳える堰堤の、遥か上流に位置する取水施設以遠となる。
ただし、この施設を越える為には、20メートル近い岩壁をいくつも直登・降下、幾度となく断崖のヘツリをこなさなくては目的の地域へは到達出来ない。その為、この渓を詰めるに当たっては、命の危険と 常に隣り合わせで有る事を予めご了承願いたく、決してみなさんに対して本渓への釣行を促している訳では無い事も併せてご了承願いたい。
今回、私は万全の心構えで挑んだ訳で有るが、度重なる高巻きを思い出せば、もう2度と同じルートでのアクセスはご免だ。

そんな遠く隔たる上流に、今もなお存在しているかも知れない”桃源郷”を求めた私は、標高と季節、地理的な関係が影響しているので有ろうか、この時期に於いて、大きな雪渓が残る流れは水温4.5度、 ハッチの”ハ”の字も確認出来ない、最悪のコンディションを目の当たりにする事となる。

本ページは、現在のありのままの姿を、貴重な1つの記録として公開する事にした。

第3堰堤上から上流を望む

奈良田ダム下から続く林道を行ける所まで進む事10分。行き止まりは車がUターン出来る位のちょっとした広場になっている。
ここから歩き出し数分の所に、本渓3基聳える最後の堰堤が立ちふさがる。この堰堤は右から巻く。
ご覧の様に流れは無く、とても渓流とは表現し難い。
初めの滝

土砂の堆積する河原を進む事20分程で、水の流れは貧弱ながらも、V字が切れ込む南アルプス特有の様相と化す。
じきに現れる第1番目の滝(写真)は右から巻いた。
遡行開始から約1時間地点の渓相

相変わらず枯れ沢が続き、両岩壁のところどころからわき水が流れ落ちる。
ここに至るまでに、いくつかの高巻きをクリアーしたが、緊張と先の見えぬ不安から、巻きの撮影も数もチェックするのを忘れた。
遡行開始から約2時間半で現れる難所
両サイドに足場は無く、手前の深みは2メートルくらいの水深が有る様に見て取れる。こんな寒い日に泳ぐのはイヤだなぁと辺りを見上げれば、左右共に切り立った絶壁が... かろうじて足場の取れる左側を選択し仕方なく岩壁にへばりついた。
林野の関係者?いつ誰がなんの目的に垂らしたので有ろうか。上から風化したトラロープが降りていたので、掴めるところまで移動する。が、決してこれらを信用してはいけない。全体重を掛けて 切れたら最後、遥か下に待ち受ける岩に叩き付けられ一巻の終わりとなる。
難所をクリアーすると現れる”黒河内の取水施設”
直登の後、視界の開けた絶壁中腹から先を見渡すと、なにやら人工建造物が目に
入った。取水施設だ。
上流から流れてきた水は、ここで全てが飲み込まれ、奈良田の発電所まで地中トンネルで導水する。
これより奥は、待ちこがれていた本来の黒河内川にお目にかかれる訳だ。その期待が先行し、自ずと先に進む足取りも速まる。
おいおい!また直登!?
施設におじゃまして見ると、水門ゲートをコントロールする配電盤と、1〜2畳ほどの事務小屋が置かれているだけだった。はて?谷に通じる道が無いぞ...想像では容易に降り立てる道筋が 有るハズだった。
行き止まりの施設最奥でモジモジしていると、上から垂れる1本のロープが目に付いた。「へ...?ちょっと待ってくれよ、また登るんかいなぁ。」正直、もう巻きはうんざりしていたので気が 進まなかったが、先に進む手段がこれしか無い以上、黙って突っ立っていても始まらず、いやいや登り出すハメに。
これが”黒河内川”の流れだ!

建物を覆い込む様に被さる奥の絶壁をクリアーすると、やっと流れに立つ事に成功。
水量は余り多くは無いが、人知れず流れ続ける谷には、どこか重たく厳粛な雰囲気が醸し出される。
北俣・南俣の出会いを撮影

向かって右側が”北俣”、左側が”南俣”。目測で、おおよそ3:2程の水量がここでぶつかる。
今回南俣を選んだ理由は、水量が多かった事と、傾斜のきつい北俣では釣果も余り期待出来ないで有ろうとの判断が有った。
2沢の出会いから数分後の渓相

1時間も詰めた頃だろうか、両サイドの切り立ったV字地帯が終わり、辺りの視界が突然開ける。明るい河原に出て、しばしホッと出来る時間が訪れた。
問題の釣果と言えば、魚信を感じるどころか魚影すら確認出来ず、「生息していないのでは無いか」と不安がよぎる。
2沢の出会いからおおよそ500m程上流を撮影
視界が開けているので見通しの良い河原が続くが、問題の釣果は相変わらず
無く、どんな過酷な遡行にも耐えるから「頼む!いっぴきでいいから出てくれ」と願いを込めて写した写真がこれ。

釣果が無い原因はこれか?まだスノーブリッジが崩れずに綺麗な口を開けている。水温4.5度、かろうじてユスリカが1〜2匹程度飛んでいる状況だ。まだ1ヶ月くらい早いのかも...
見事な”オス本州ジカ”の死骸
先を詰めるに従って、だんだんと強い異臭を感じる様になった。
去年、同じ水系の”保川”を詰めた時も、獣臭を感じてビビりまくった経験を持つだけに、とっても不快な香りだった。
原因はこれ。獣の体臭では無く、シカの腐敗臭。
それにしても、対称バランスの取れた見事なツノだ。推定70cmは有ろうと思われるそのホーンは、エゾシカの物と引けを取らない。聞くところによれば、エゾシカの角でさえ80cmは
越えないと言われるのだから...私はこれを見て興奮した。宝物に写った。山からの贈り物だと思った。首ごとザックに入れて持ち帰ろうとも思ったが、帰りの行程と悪臭を思えば気軽に背負う訳にも行かず、腰にぶら下げているナタで根本を叩き切る事を考えた。重量2キロ近くのナタを振り下ろす事数度で、刃がS字に曲がってしまった。ノコギリさえ持参していれば...
シカの死骸地点から上流を望む

まだ時間的にはかなり余裕が有ったので、巻こうと思えば可能な落差だった。ただ、ここまでの釣果を考えれば、恐らく上へ進んだとしても芳しい結果が期待出来るとも思えず、今回は一旦引き返し、6月以降のベストシーズンになったら、再び桃源郷を夢見て遡行する事とした。
しばしのお別れで有る。
#それまであの角残ってるといーなー