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南アルプスには幻の池が2つ存在する事をご存じだろうか。 1つは、大井川源流東俣の”池ノ沢池”。そしてもう1つが、本編で取り上げる”大笹池”。大笹池は、何時の時期にもハイカーで賑わう甘利山の中腹に位置しながら、 国土地理院の地形図にも山行専門のガイド地図にも載る事が無く、その存在を知る人は少ない。甘利山南斜面からこんこんと湧き出した清水は池の最奥に溢れ出し、その筋は御庵沢(ごあんさわ)となる。 当方はこの2つの池を、北海道3大秘湖ならぬ”南ア2大秘池”と呼んでおり、その幽邃な雰囲気は秘池の表現が似合う。 ここで少々、御庵沢についての釣り情報に触れておくと、御庵沢とは御勅使川(みだいがわ)の支流で、流程6km程度の小渓流である。最下流部はウエストリバーオートキャンプ場の管理下にあり、 ライセンスが無ければ釣りは出来ないのでご注意を。 御庵沢での釣りの核心部は、林道御庵沢小武川線のゲート以遠。ゲート脇から暫く渓伝いに歩き、程なく現れる砂防ダムを越えたその上流から釣り上がる。途中、ナメ床の滝等難所が点在 するものの、どれも巻き跡が付いているので、それをたどれば上流の元滝付近まで遡行は可能。魚種はイワナとアマゴの混在。ちなみに、ゲート横から急下降して渓に降り立つ事も出来るのだが、 前述の砂防ダム以遠でなければ釣果はあまり期待出来ないので念のため。また、ゲートより下流域は堰堤の連続で魚影も少ない。 御庵沢の中流には”元滝”と呼ばれる落差のある滝が名所となっているのだが、正直大した滝では無い…… 話を大笹池に戻して。 初めて大笹池で釣りをしたのは6〜7年前。ヤマトイワナの探索で訪れた。悠々と泳ぐいくつもの魚影に興奮しながらキャストを繰り返すのだが全く釣れない。悔しくて翌年も訪れたが、この時も全くダメ。 透明度が高すぎるのか… そして今回。まず池を眺めて感じた事は、以前に比べて魚影が少ない事。アメンボや湧水のそれとは明らかに違う波紋がところどころで確認出来るので居るには居る様だが目視が難しい。その程度の数である。 すり鉢状の鞍部に貯まって出来た池、故に周りは深い樹林帯で、キャストしようにも覆われた木々にバックスペースが限られ遠投が出来ない。苦労して現地におもむいても釣れない。ロストフライも多く、全く報われない。 本編で紹介するルートは、片道トータル700mの標高差を稼ぐ必要が有り、山歩きに不慣れな方には少々しんどい行程なので、自身の健脚度合いと相談された上で現地に出掛けられる事が望ましい。 今回は渓流遡行というよりも登山色の濃い釣行となっている為、写真中心のルート紹介に終始した。 【ルート】 椹池(さわらいけ)・白鳳荘 → 南甘利山 → 大笹池分岐 → 大笹池 → 大笹池分岐 → 甘利山 → 広河原 → 白鳳荘 |
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大笹池の魚影の少なさにはガッカリだった。時間と労力を費やさなければ行く事が許されなかったフィールドには、何時の間にか別ルートの登山道が開かれた。
前述した御庵沢小武川林道に通じるそれである。この登山道が理由で大笹池の魚が減ったと考える事は出来ないだろうか。 学識者の話で、イワナは繁殖能力が高いと聞いた事が有る。確かに、台風や大雨の惨禍で渓が増水被害に合い、見るに堪えない渓相に変わってしまった後にも、 どこから戻って来るのかイワナはいつの間にか再び同じ場所に定着し繁殖を繰り返す。 この事から、私は何時のどんな状況に於いてもキャッチ&リリースを実践しなければならない等と提唱している訳では無いが、イワナの繁殖スピードを超える捕獲は”乱獲”となり、意味が変わってくる。 乱獲はそこに住む生体を残さない。 慎むべき大問題だと思う。 |
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