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【黒桂河内川(下流部)】 山梨県・西部

*早川漁協については放流実績を公開していない為、詳細は不明
*「対象魚」については早川水系全域を指す
対象魚 ヤマメ/イワナ/ニジマス/コイ
釣果程度 ☆☆
混雑程度 ☆☆
サイズ ☆☆☆☆
放流実績 不明
総合評価 ☆☆☆☆☆
解禁期間 3月15日〜9月30日
入漁料 日釣券(前売り)・¥800-/日釣券(現場売り)・¥1,200-
備考 黒桂河内川と書いて”つづらごうちがわ”と読む。
西部から流れ込む早川の支流。
ページ一番下に紹介している3段ゴーロ滝まで作者は日帰り釣行をしたが往復に約15時間かけたので一般的には日帰り釣行は無理との判断をした。
その理由から難易度には”★★★★”を記してある。

周辺地形図 数値地図から描画したCG 紹介区間トータルデータ

兄弟川の内河内川・滑河内沢に比べると水量が豊富でヤマセミが生息している等、清流といった趣がある。
対象魚はほとんどがヤマメで、源流部にのみ天然イワナが生息する。このネイティブを求めて沢山の釣り人が入渓するが、大多数は途中で挫折し引き返してくると聞く。
”峡谷・黒桂河内”が人を寄せ付けない理由の1つとして、険しい山々に阻まれたゴルジュ帯である事と、この時代に珍しく比較的人の手が加えられていない事が上げられる。 早川合流地点から数キロにわたって林道がつけられてはいるが、所々、落石によって道が倒壊している(黒桂河内川(上流部)ページを参照) うえに、渓のはるか上方100〜200m付近にある為、林道からの入渓はほぼ不可能。ただし、唯一第二堰堤右に降りられる獣道があるが、傾斜が厳しく滑落の危険有り、 くれぐれも注意されたし。よって、安全かつ釣果が期待出来る区間は、下流から第二堰堤まで(約3時間のコース)で、以遠はゴルジュ帯と巨岩に阻まれ遡行困難となる。
以上の理由から、上流部は入渓者がめっきり減り、魚が残っているのも事実であるが、トラブルを未然に防ぐ為にも軽い気持ちでの入渓は差し控えた方が賢明だ。

幾筋もの支流を抱える早川水系に於いて、恐らくこの黒桂河内川ほど人を阻み続ける谷も珍しい。それだけに、この渓のワタシが知らない何処かの流域には、未だ魚の楽園がきっと有る に違いないと信じて疑わない。そして、この渓をこれ以上人間の手が加えられる事無く、現在と変わらぬ姿を末代にまで伝え続けて欲しい。
このページでは、そんなワタシが愛して病まない”黒桂河内川”の雰囲気だけでもお伝え出来ればと思う。

注):最下流部からのエントリーについてだが、早川本流出合いから300mの区間は”南アルプス邑野鳥公園”の管轄下におかれており、野鳥保護の理由から入山をかなり厳しく管理 している。季節(6月位)によっては、ヤマセミが巣を設営する為に下流部の入渓が規制されるので、入渓時くれぐれも注意の事。監視員が常時巡回しているので、不明な点は 質問するとよい。


「早川本流出合い」

野鳥公園を迂回する様にエントリーすると、400〜500mで大堰堤のコンクリートに阻まれる。川から直接高巻くルートは確保 されていないので、一旦引き返し左につけられた登山道を利用し堰堤を越える事となる。
この堰堤には左側に鉄パイプの階段が確保されているので、これを利用する。

*写真右上の山肌に確認出来るスジが林道。
「第一堰堤より上流を望む」

堰堤下までは、左にバードウォッチング用のハイキングコースがつけられており、エントリー・ランディング共、非常に楽で初心者でも十分に楽しめる。
堰堤から上流に約1Kmの区間が左の写真。
「第二堰堤」

ここに至るまでは、冒頭で申し上げた通り下から約3時間かかる。拾い釣りの要領でペースを上げた場合は約1時間程の行程だろうか。
第一堰堤と違い、階段等は用意されていない為、もしこれより上流を攻める場合は、堰堤右側に刻まれた獣道を利用した巻きを強いられる事になるが、人が利用する為につけられた道 では無いので安全性は皆無。滑落防止に最善の注意を払う必要がある。
もしくは上方の林道と通じる獣道を利用するのも手では有るが、”道”と判断出来る状況に無い為、ルートファインディングを誤る危険性大。
くれぐれも注意されたし。
「遡行開始から5時間地点」

林道は、前方に見える山の中腹に走っている。

この辺りで釣れたヤマメ。
かなり奥まで遡行して来た事を実感していた矢先、一見1年魚とも思える程小さなヤマメがドライフライにヒットした。
こんな所にまで定期放流は実施されていないハズだから自然繁殖したと考えるのが妥当だが、いずれにせよ勇健に生きる魚の姿を確認出来た。
「遡行開始から7時間地点」

これより、いよいよ巨岩ゴーロ帯に入り、ぐんぐん高度を上げる。
岩を登れずに、やむなく左右の崖を高巻く事数知れず。落ち込みは全て良ポイントで、横の岩影からそっと覗き込むと巨大イワナの遊泳を何度も確認したが、羽虫パターンのフライには無反応。唯一、1度だけ#12スティミュレーターに食らいついてきたが、それ以降は全く相手にされなかった。アリ等を主食にしていると思われるので黒系のフライが良いのかも。
高巻きの最中、サルの集団にギャーギャー威嚇をされたのもこの辺り。
「遡行開始から8時間地点の景観」

ゴルジュ帯切れ目の開放区間。ホッと緊張が途切れたひととき。(写真右)
上に記述のゴーロ帯を抜けかけた辺りで待望の大きなヒット。岩の裏に隠れる様に淵に向かって投入したコンパラダン目がけて水中から浮上してきたのは 29cmのアマゴだった。6フィート6インチのロッドが弓なりにしなる。ネイティブの引きは下流の放流魚と比較にならない程強い。
何よりも生活環境の厳しい山岳部において、これだけ成長するにはよほどの歳月を要したに違いない。このいかめしさは”精悍・勇敢”と言った表現を超える。
「遡行開始から9時間地点の景観」

はるか上方に林道の橋が見える。
あそこまで登れるルートが有れば、帰りがどんなに楽だろうかと、かすかに確認出来る壊れたガードレールを恨めしそうに眺めた。
今回の遡行目標地点である「三段ゴーロ滝」までは、確かもうすぐのハズだ。帰路の時間配分を考えれば、そうチンタラとはしていられない。
この辺りからペースを上げ始めると、釣り方がとっても雑になっってしまった。これらの理由からか、釣果はパッタリと無くなる。
「遡行開始から10時間で行き着いたゴーロ滝」

この廊下奥のすぐ左上に、落差約15mの滝がそびえ、事実上の軽装で遡行出来る限界地点がここだ。道具は言うに及ばず、まだ時間と体力が残っているなら、巻いちまおうかってな気持ちに もなるのだが、帰りのアルバイトを考慮すれば無茶は出来ない。
以遠は、滝とゴーロの連瀑帯と化し、三ツ道具・ザイル必携のロープワーク技術が無ければ先には進めない。そんな渓相が取水施設まで連続する。