[ホーム/"ヤマトイワナ"探釣記]



2002年5月13日 : 早川水系 F川 F−1支流



以前、連日の雨の影響か、濁りで釣りにならなかった渓に足を運ぶ事にした。あの濁流の中にこんな際どい魚種が潜んでいたなんて...
あまりの濁りに業を煮やし、途中で引き返したのは去年の事だった。

「をををーっ、デカぃ!」

車を留めた地点から、道無き道を登って登って歩きまくる事早3時間。それまで釣れていた魚種から、まだ見ぬ手応えを上流に感じていた。
パカスカパカスカと釣れてくるヤツら全てにヤマトの雰囲気を感じていたからに他ならなかった。だって釣り上がれば釣り上がる程、体側の朱斑が濃くなっていくんだもの。
暫く進み、右写真の淵に出くわす。いかにも潜んでいそうな落ち込み目がけて、開きの下から身を隠す様にアダムスパラ#11をキャスト。
心臓がバクバク鳴るのが解る。が、しかし何回投げても反応は無し。余り過剰な期待はするもんじゃないなぁと考えながらの惰性キャストだった。サラシの左奥にポテッと落ちたフライ は流れに乗って左流心へと移動。テンションのかかったフライがターンを描いた瞬間、デカい尾びれがゆっくり水面に現れたと同時にアダムスが消えた。
「ヨシ、きたっ!」
とっさにアワせると、深場へグイグイ引き込まれる感触に、たまらず右手をバットセクションの上部に移動させた。
淵の奥底で左右に動き回るラインを見ながら、4x通しのリーダーシステムである事を思い出し、イチかバチか力を入れて引きずり出す事に。確実に丁寧にラインを寄せる。開きまで寄ったヤツの全体像が目に入るや否や...「うっひゃ〜ぁぁぁぁっ」思わず声を漏らしてしまう。正直クジラを連想してしまった。(^^;
バケモンを足下まで寄せる事に成功し、後はネットですくうだけ...と思いきや肝心要のネットが背中とザックに挟まって使えんぢゃぁ!
「あったく、こんな時にぃー」
暴れもがきパニクってる大物を目の前に、こちらもパニクってどうすべきかの思考能力がゼロと化した。取り敢えず左手でリーダーをワシ掴みにした(みたい)らば、なんとも例えようの無いズッシリ感が腕に伝わる。このままではヤバい。とっさに、 自分の指4本をエラに引っかけようと右手を近づけた瞬間、激しく頭を振られてフックがパーンと外れた。
バーブレスフックを恨んだ。いや、ホントに恨んだんだってば。
"逃した魚はデカい"とよく言われる格言の通り”推定50cm”と考え続けていたけれど、1日経って冷静さを取り戻した今、私は勇気を振り絞って48cm位に訂正しようかと... とにかくデカかった。

如何にしてニッコウ系が蔓延ったのか

毎回表現している事かも知れないけれど、人跡未踏の地(とはちと大げさか)ってのは、こんなにも魚が残るもんなんですなぁ。酷いポイントでは同じ場所から4尾も釣れたゾ。その内、飽和して陸に上がるヤツが出てくるな。
ここで不思議に思うのは、全く人の踏み後も無く、ゴミのかけらも無いこれほどまでの奥地に、なぜニッコウ系との交配種が生息しているのか?って事。
昔、誰かが異種を放流したのだろうか...んん?こんな所まで?有精卵なら持ち運びは可能か。それとも下流のやつらがここまで登ってきたか?でも途中には幾つも滝が有ったから 登って来れる訳が無いし。
謎は深まるばかりだが、今となってはDNAで追跡調査なんて不可能だろうしなぁ。
なんたって、これだけ乱放流が繰り返されてる時代だもん。

たーのむから出てきてって

純系のヤマトは相変わらず姿を見せてくれない状態が続いていたが、アダムスパラ#11へ元気よく飛び出してくる個体は、ほとんど25〜29cmの良型ばかりだった。ここまでの 推定釣果数は確実に80尾以上。なんたって撮影で128MBの他、64MBの予備メディアまで使い切ってもまだ足りない釣果なのだ。しかも、か細いションベン沢にも関わらず、上へ 行けば行くほどサイズが大きくなるってのはどーゆー事?

いよいよ水源間近か...
川幅は50cm〜1m位にまで狭まったが、脇から流れ込む支流が少ないからだろうか、下流と水量はそんなに変わらない。その分、深場が増えた様に感じる。
更に上流へ進むとそれまでの渓相が一転し、突如連瀑帯へと突入した。この辺りから高度を稼ぎ出すのだろう。ゴルジュの雰囲気からして
先の釣れる区間がそう長くない事を悟る。それでも魚影は相変わらず濃く、ポイントポイントからは狂った様にフライに飛びついてくる釣果に 久しぶりの満足感を得たが、目的の純血ヤマトと思われる魚体には未だ出会えないまま、とうとう簡単には巻けそうに無い直瀑2段の通らずに行き着いてしまった。

純血種確認出来ず...

あーぁ、今日の感じならイケるぞとマジで期待してたんだけどなぁ...
この先を探るなら、右崖上を大高巻きして以遠の何処かに下降するしか手は無いのだが、帰路に要するであろう3時間程を見込めば、もうこの辺りで引き返すのが得策で有った。
むむむ、残念無念...
汚れの知らないヤマトイワナがこれ以遠に生息しているのかも知れない期待を胸に、目の前に立ちふさがる滝を睨みながら遅い昼食を頬張ったのだった。

これだけ見事な特徴を兼ね備えた個体がバンバン釣れるんだから、原種が居ない訳が無い。
次回はこの上ぜったい行っちゃるかんなぁ、待ってろヤマト。