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【尾白川・上流部】
山梨県北部(2021年06月08日)
対象魚 イワナ
釣果程度 ☆☆☆
混雑程度
サイズ ☆☆
放流実績 無し
総合評価 ☆☆☆☆☆
入漁料 年券・¥5,000-/日釣券(前売り)・¥1,000-/日釣券(現場売り)・¥2,000-
備考
久しぶりの尾白川上流レポートである。
前回、2001年07月【尾白川・上流部】の記事を公開してから20年の歳月が経過したものの、今もなおその渓相美、数釣れる釣果実績、サイズ、どれをとっても当時のまま何も変わらない。
更に付け加えれば、沢登りのメッカである事についても今も昔も変わらない。それぞれ目的は違えど頻繁に入渓者が絶えない人気河川でありながら、魚の数を減らすこと無く状態維持され続けてきた事に驚く。 ここはポテンシャルの高い渓だとつくづく実感する。

2018年、2019年に連続して上陸した大型台風は県内の山々に壊滅的な爪痕を残し、ここ尾白川上流への到達ルートにも大きな影響を及ぼした。この事から以前は何度も足を運んでいた同エリアであるが、台風上陸以降は足が遠のいていた。今回は5年ぶりの入渓となる。

そして釣行の後半、滑落しかけ、遭難しかけ、命を落としかける事態になろうとは、まだこの時は知るすべもなかった。

日向山の登山口ゲート。
朝8時に到着した時には20台ほど停められる駐車スペースは既に一杯で、仕方なく今来た道を戻り林道の適当な待避所に駐車する。平日だってのに日向山の人気はすごいなぁ…
ここから林道終点までは片道約5km。単調な林道をひたすら歩く事になるが、立て看板に『錦滝へ行くことができません この先で斜面の大規模崩落が…云々…』との記載がある。 錦滝は林道の中程に位置する景勝地だ。はたして通行出来るのか、現場の状況が気になる。

ほどなく錦滝が見えてくる辺りで、大規模崩落の現場が目の前に現れる。
林道が跡形もなく消えている…
どう越えようかと近づけば、高巻きルートの踏み跡と共にフィックスロープが設置されていた。
町の関係者によるものか、山岳連盟などの有志の方々によるものか、いづれにせよありがたい事である。
これを伝い難なく崩落斜面をクリアー。

歩きだして約40分で、あずまやの佇む錦滝に着く。
ここは日向山登山の休憩所として利用される以外にも、山野草愛好家がこぞって集まる有名スポットでもある。貴重な雪割草(ユキワリソウ)の群生が間近に見られるからだ。 早春には、滝のしぶきを浴びなら岩に張りつくように咲く光景を接写する事が出来る。今回は時期が悪く雪割草の花はもう終わっていた。雪割草(2000年5月10日撮影)
小休止の後、2つ目のゲートを越えて更に荒れ果てた廃林道を進む事とする。

のんびり歩く事2時間弱。林道の終点に到着。
ここが下を流れる渓まで下降する取り付き点となる。
現在地は標高ジャスト1400m。ここから標高1300mに位置する渓まで高低差100mを一気に下降する。
その前に小休止を兼ねて、身支度と気持ちを整え直す。途中で古傷の右ひざがトラブったりしないように祈る。首からGoProをぶら下げて電源が入っている事を何度も確認。 こいつはかなりの頻度で大ボケかますから全く信用出来ず、故にGoPro動作の入念なチェックは欠かせない。

ロープとの摩擦で手が焼けない様に、手袋をはめていざ降下開始。
途中垂直な箇所も度々出現し、何かと気が抜けない状況が続く。もう既にプチ自殺状態である。
ロープの手助けが無ければ、とてもじゃないが降りられない。
下降から50mほど降りた辺りで文字通り "頼みの綱" であるフィックスロープが終わってしまった。以前はもっと下まで延びていたハズだし、まだ下降ルートは続くのになぜ? とは思ったが、ロープが無くても降りられそうだったので、疑問に思いながらもやり過ごして先を急ぐ。

日向山の登山口ゲートから約3時間、無事何事も無く尾白川の左岸に降り立つ。変わらず息を呑むほど美しい光景が広がる。この景色は何度見ても素晴らしい。
河原の石に腰掛けてタックルの準備をしていると、25〜26cmくらいだろうか。魚が目の前をスーッと泳くのが目に入る。「をををーっ♫♪♪〜♫」
カロリーメイトでパワーチャージを済ませた後、逸る気持ちを抑えて目の前の魚にターゲットを絞る。???。鼻先までフライに寄ってくるのだが。残念ながらこの魚はとれなかった…

冒頭で記した通り、これからのハイシーズン、以遠は休日ともなれば数多くの沢登りパーティーによって専有されてしまうので、少なくとも土日の入渓は避けた方がよい。 あの人達、絶好の釣りポイントで平泳ぎはじめちゃったりするからね。 まぁそうは言っても土日しか時間が取れないという方は、状況によっては上流ではなく下流に目を向けると宜しい。沢屋さんが入らない下流側の方がむしろ魚は釣れる。以前この下の淵で37cmのイワナを釣った実績もある。 いづれにせよ、巨岩帯で行く手を阻まれる箇所が多いので、移動は右側の林の中にルートを取る事。

今日は火曜日。6月の平日は人が少なく、まだ誰とも会っていない。その辺りが起因するのだろうか。魚は想像以上に釣れた。各ポイントに流したフライには、ほぼ例外なく何某かの反応があった。 短時間にもかかわらず28cmを筆頭に12〜13尾は釣ったのではないか。全てはイワナで、このエリアに於いては、これまでアマゴの釣果実績は無い。
満足出来る釣果に恵まれた事もあって、今日は早めに切り上げる事にする。早い時間に帰路に着けると、気持ちにも余裕が持てる。早々に納竿し降りてきた時と同様に身支度を整え、下降点に移動する。

大きなぶどうの弦が行く手を邪魔していたので、とりあえず左にルートをとり、迷わず直登する。
思えば、この判断が運命の分岐点となった。
登り始めてしばらく経つが、一向にロープの末端が見えてこない。こんなに登ってもロープが目に入らない?それはいくらなんでもどうだろ?まさかルートをミスってるんじゃないかと一抹の不安と焦りを覚える。
斜面はやがてガレ場から草つきに変わると、程なくして適当な足場の確保もままならない状況になってしまった。

そういえば右上方に進める雰囲気のがれ場があったような気もするがもう遅かった。気がつくと眼下は断崖絶壁である。 目がくらむ様な高さまで登って来た事に焦る。谷底は言葉で形容出来ないほど深く、もはや渓などどこにも見えない。
来る時に下降した時の事を必死に思い出す。こんな薄暗い景色では無く、あの辺りはもっと明るく開けていたハズだ。この時、ようやくルートファインディングをミスった事に気付く。ってことは、この先登り続けてもロープの末端は現れない事を結論づけている。
かと言って、もはや下るには危険すぎる領域に入っていた。

もう少し登れば左右どちらかにトラバース出来る箇所があるかも知れない。もう少しだけ進むことにする。いや、でも待てよ…左右どちらかって言ったって、どっちに渡るのが正解かも分からない。
この上も左右も見渡す限り踏み跡は皆無だった。どうやら未開の地に迷い込んでいるらしい。
戻るか、さらに進むか。しばらく葛藤を繰り返すが、結論は更に進む事となった。だが、上に進み続ける事で状況が好転するかは分からない。左右どちらに向かうのが正解かも分からない。そして下降が許されないとなれば、もう八方塞がりである。

何度も来ているフィールドなのに、気の緩みが大きな事故を、取り返しのつかない事故を招くとはこの事だ。
これは完璧マズい事になったが、反省などしている余裕はない。
その度にもう少し上に行けば、何か状況が進展するのではないかといった根拠のない淡い期待はことごとく裏切られ、さらに高度を増していく羽目になる。
異様な斜度は不気味な恐怖感を醸し出して襲いかかり、焦りを更に後押ししたが、難所だらけの中、もう上に進むしか手は無かった。

やがて大きな木の幹につかまり小休止を取る。時間は13時を過ぎ、既に太陽は真上に近かった。モタモタしていると日が傾き始める。そうなってしまえば更にマズい状況に陥る。
圏外の中、一か八かGoogleMapを表示すると、キャッシュされていた地図データとともにGPSがワタシの今いる現在地を表示した。をを、ありがてぇ。かくして向かうべき方角は右前方である事がハッキリした。
危機的状況の中でも、進むべき方向がハッキリし、わずかな希望が持てた事で多少気持ちが楽になる。

とにかくチャンスが有れば右へ右へ。1箇所、斜度が急過ぎてどうしてもトラバース出来ない所は、意を決して数メートル下の唯一の足がかりである木の根元目掛けて滑り降りる決断をする。着地に失敗すれば更にその下方へ滑落するリスクはあっても、もう迷っている時間など無かった。
着地は成功。更に右方向へトラバース。
GoogleMapは確実に取り付き点の方向へ向かっている事を示していた。
と、進行方向の先が開け、はるか下方の崖を見下ろす先に、行く時に伝ったフィックスロープが目に入る。(左画像の一部を拡大)

やっと見つけた…あそこか…
ここでようやく本来の下降ルートと自分がいる位置の距離感を具体的に知る事になり、あわせて、ぜんぜん違うところを登っていた事を実感する。
捨て身でこんなところまで登ってきたのか…
とにかくあのロープを掴みたい。あそこまでたどり着かなければ。
その一心で岩をヘツり、斜めにのびた木の幹にぶら下がり、四つん這いで滑り落ちては登るを繰り返し、右方面へ右方面へ、斜度と重力に逆らってひたすら右方向へと移動する。

あともう少し…

命と引き替えでなければ林道までたどり着く事が許されない尾白川地獄…
紙一重であった。

13時45分、無事生還。
GPSが正確な方向を指し示し続けてくれた事に加え、右ひざが持ちこたえてくれた事も好転につながった。

ワタシの釣行時3大危機。
1つは「ヤマトイワナ探索時に鉄砲水に飲み込まれた」一件。 そしてもう1つは「猿留川の林道でヒグマの親子の間に入ってしまった」一件。そして今回の一件が3大危機の1つとして加わってしまった。

なぜこのような事態に陥ったのか…
以前は河原からちょっと登ったところにトラロープが残置してあった。そんな状況だったので、ルートを見失う心配など皆無だった。
思い込みと油断は禁物である。
残置ロープがこれまでより短いと気付いた時点で、周りの状況を確認しておけば何の問題も無かったハズだ。その時点でGoogleMapにピンを打つ機転が利いていれば尚良かった。 いつも来ているから、よく知っている場所だからと、高をくくって状況を見くびった結果にほかならない。
自宅に戻るまでは常に気を張っておかなければならない。鉄砲水の時もそう。ヒグマ親子の時もそう。いづれもボーーーっとしていて、どこかに過信があり、気持ちがダレていた時に起こった惨事である。

あの場において写真なぞ撮ってる余裕は無かった。後半の急登シーンは全て首からぶら下げていたGoProが撮影した動画であり、その内の1コマを掲載写真としてそれぞれ抜き出したものである。
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